ロールトップデスク
ロールトップデスクとは
ロールトップデスクとは蛇腹状のカバーのついたデスクのこと。
カバーを巻き上げると、中から天板が現れます。ロールトップデスクは機能性に富んでいる場合が多いですが、こちらのロールトップデスクも同じく様々な機能が備わっています。引出しの数や板で細かく仕切られた収納スペースから、一目見ただけで収納性に優れていることがわかりますが、それだけではありません。
まず1つ目がペンとインク壺の隠れた収納スペース。ロールトップ内部に細かな仕切られたスペースがありますが、その下に大きく空いている場所があります。ここの両サイドのかまぼこ型の板に秘密があります。この2つの板を手前に引くと…
なんとペンとインク壺の隠し収納スペースが現れます。右にはインク壺が置けるように、そして左にはペンがしまえるようになっています。
また追加の物書きスペースとして両サイドから追加天板を引き出すことができます。
そして何より興味深いのがロックの仕組み。通常のデスクではロックの機能があったとしても、1つ1つの引出しの鍵を順番にかけていかなければなりません。引出しの数が多い場合、これはかなり面倒な作業です。ですがロールトップデスクにはそんな手間がかかりません。ロールトップを閉じて、その1ヶ所のみ鍵をかければ、全ての引き出しに同時にロックがかかる仕組みが備わっています。
このように収納や追加天板、連動ロックと機能性豊かなロールトップデスクですが、ここまで多機能であるのには理由があります。というのもヴィクトリアン時代にはロールトップデスクは銀行や会社で使用されていました。特に銀行ではセキュリティが第一。そのため連動ロックが重宝されていたと考えられます。また事務仕事も非常に多いことから、こうした優れた収納性にも納得がゆきます。
今回ご紹介しているこちらのロールトップデスクはエドワーディアンの時代に制作されたもの。線象嵌が全体に贅沢に施されています。マホガニーとサテンウッドのクロスバンディングのコントラストが一際美しい作品です。
そしてロールトップを良く見てみると蛇腹の1つ1つにも細かく線象嵌が施されています。非常に丁寧な職人の仕事が見て取れます。
引出し内部にはJames Phillips & Sons Ltd.とキャビネットメーカーの社名。
ロールトップデスク自体現在数が非常に少なくなってきていますが、状態の良いものもなかなか見つかりません。そうした背景がある中で、大切に使用され経年で美術的価値を獲得したこちらのロールトップデスクは大変貴重であると言えます。
形状が似たデスクにシリンダートップデスクがありますが、こちらはまた別の機会にご紹介いたします。