ウォールナットの時代
英国は共和制時代に入り、一旦建築や家具のデザインは停滞。
1660年の王政復古で、芸術にとても関心が強かったチャールズ2世が王位に就いたことで、また大きく家具のデザインが変化しました。
フランスからウォールナット材が輸入されるようになったことで、「オークの時代(1500年から1660年)約110年」から「ウォルナットの時代(1660年から1720年)約60年」にシフトしていきます。
ウォルナット材はオーク材に比べて木目が細かく、柔らかいため、ハイレリーフ(高浮き彫り)が主流になりました。
カロリアン様式
チャールズ2世の時代、フランス、オランダ、スペインそして中国趣味(シノワズリ)の影響を受けたデザインの家具が多く造られるようになります。
「カロリアン」というのはチャールズのラテン語「Carolus(カロルス)」が由来。
ジャコビアン様式で誕生したボビンレッグが発展した「バーリーシュガーツイスト」と呼ばれる、らせん状にねじられたような挽きもの細工もこの時代に誕生したデザインです。
ウイリアム&メアリー様式
チャールズ2世の姪メアリー2世とその夫ウィリアム3世の共同統治時代(1689-1702)、オランダ出身のウィリアム3世がオランダから家具職人を連れた来たことで、家具の形や装飾にオランダからバロック様式の影響を受けます。
バロック様式といえば、華麗かつ重厚で躍動感があり、楕円形をモチーフとする装飾性。フランスのルイ14世が造った「ヴェルサイユ宮殿」が最も有名です。
この時代のデザインは女性的で装飾的な外観が好まれ、脚には釣鐘型の”ベルフット”や、脚をつなぐ補強には”ストレッチャー”という特徴的なパーツデザインがあります。
また寄木細工(パーケットリー)や象嵌(マーケットリー)などの技術もイギリスの家具デザインに大きな影響がもたらされました。
パーケットリーとマーケットリーについてはこちらもご覧ください。
クイーンアン様式
アン女王の時代にはイギリスもロココ様式の影響を受け始めます。
椅子やチェスト、コンソールテーブルなどの脚に、俗に言う「猫脚」の「カブリオールレッグ」などが生まれ、エレガントな曲線が流行しました。
この時代に、カブリオールレッグと花瓶型の背板、ダイニングチェアとして初めてクッションが付いたクイーンアンチェアが誕生しました。
アン女王の時代は1702~14年と最も短い期間ですが、アン女王の没後ジョージ1世が即位してからもしばらくはクイーン・アン様式が続きました。
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教会の力が強い時に始まった「ゴシック様式」、その後はここまで王や女王の名前が様式の名前になっています。その時代ごとの王や女王が気に入るデザインが作られてきたのは興味深いですね。